2010-04-26

伊藤計劃 伊藤計劃記録

故伊藤計劃氏の未刊行短編小説や散文、映画のレビュー群を一冊にまとめた本です。
小説”The Indifference Engine”では同盟大国のお節介で不虞者とされてしまった”ぼく”に悲壮の念を感じ
”セカイ、蛮族、ぼく”ではヲタク萌え展開をことごとく打ち崩す展開に笑わせてもらい
”From The Nothing,with Love"では、展開の見えないプロットから始まり、臨界点を越えると忽ち個々プロットが符丁しだして最後には納得がいくという、いわば芸を見せてもらいました。

特にその中でも”屍者の帝国(仮)”は(未完)で筆を絶っている。
そんな一見何でもないことが、虐殺器官に収録された大森望氏の解説と相まってとても悲しい気持ちに浸ってしまいます。

映画評も(もっとも氏が亡くなる直前までですが)どっぷり伊藤流哲学的で、こんな深い楽しみ方があったのか、と絵を思い浮かべながらくすくす笑ってしまう、時には眉間にしわを寄せてしまう(でも的外れな事を言ってるわけじゃなく、意見がストレートすぎて苦笑した結果)ほど、映画ファンの心を惹きつけるものでした。

散文はインタビューを束ねたもので、いくらかノイジーでしたが。


最初の最初は(失礼ながら)小島秀夫が売名のために立てたゴーストかと思っていました。
(名前があまりにも怪しかったから・・・でももうゴーストでいいからこの世に存在していてくれとさえ思っています)

でも、前出大森望氏の生々しいまでの解説を読んで伊藤計劃という天性の筆力を持つ。況やそれを遊ばせない、いや越えるほどの博識と自身の哲学を有する作家がこの世にいたということだけぼくの心に刻み込まれました。

これで”ハーモニー”以外の伊藤計劃書物はすべて読んでしまったことになります。
なぜ”ハーモニー”は読まないのかって?
だって全編XMLで書いてあるんだもん、仕事を思い出してしまうじゃありませんか。
これは文庫化した時点で、もう一回考え直します。

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